私はドキドキして苦しくなった胸を押さえながら、
キーパットを開くと緊張で震える指を動かしながら、
必死で文字を打ちこみました。

「えっと、“ま・さ・か・ウィ・ス・パー・チャ・ット・を・い・た・だ・け・る・と・は・!”っと!」

これだけの言葉を打つのに、
こんなに緊張したことはありません。

文字を打ち終えると、
私はウィスパーチャットを送る人物を慎重に選び、
”発言”のボタンを「えいや!」と気合を入れて押します。

ピピッ!!っと機械音がして、
私の言葉が画面に発言されました。

無事にウィスパーチャットが送れたことにホッとした私は、
周囲を見渡しました。

今まで見たことがないような、
たくさんのアークスたちであふれかえるショップエリア。

色々な方が思い思いに声を出しているので、
私の発言はあっという間にショートログから消えていきました。

画面越しでみていても、
皆さんの熱気がムンムンと伝わってくるかのようです。

そして既に表示人数の限界を超えてしまったPSvitaの画面は、
“泥人形”と呼ばれている仮のキャラクター表示で埋め尽くされていて、
飛び交う会話やシンボルチャットと合わせると、

もはや誰が誰だか。

何が何だか。

全く分からない、
すごいカオスな空間になって。

それはそれは、
すっごく素敵な。

はじめてみる、
ショップエリアの姿でした。

そんな空間に自分がいると思うと、
何故だか笑いがこみ上げてきちゃいます。

いるだけで楽しくなる空間。

まるで人気歌手のライブのような、
そんな一体感でした。



私はそんな人で溢れかえったショップエリアの、
少し後ろの方に突っ立て居たのですが、
不思議とすぐに気がついたのです。

溢れかえる人ごみの中から、
そっと私の後ろに近づいてきてくれた、

その名前に。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



『ship2で盛大な忘年会が行われるらしい』

そんな面白い企画があることを知ったのは、
ある“お豆腐屋さん”のブログをみているときでした。

私が毎日のように、
楽しませていただいている、
たくさんのPSO2のブログ。

そんな素敵なブログを書かれている方々の、
なんとほぼ全員がship2のあるロビーに、
一同に集結すると言うじゃありませんか!

私にとって、
まさに夢のような忘年会です。

「すごいなー!楽しそうだなー、いいなー!」

なーんて、その記事を読みながら思っていた私なのですが。

「でも、ship2かー」

と、溜息をつきました。

どうして溜息をついたのかと言いますと、
私が今いる所はship6なので、
参加するためにはship(サーバー)を移動しないといけないからなのです。

PSO2ではshipの移動は有料となっているので、
なかなか気軽に「別のshipへ行くぜ!!」とは行きません。

ですので、今回は参加は諦めまして、
皆さんが色々な企画を考えてていたりする様子を、
「いいなー、いいなー」と指をくわえながら拝見する私なのでした・・・。



そして、時は流れ―――。



アークス大忘年会、
前々日の12月25日。

丁度クリスマスの日でした。

近所のスーパーで買い物がてらブログ巡りを楽しんでいた私だったのですが、
あるヌギニストさんが作った、
忘年会のポスターの“参加予定アークス”の名前を、
何気なく見ていた時でした。


私は見つけてしまったんです。

彼女の名前を。

たくさんの名前の中にあった、
あの憧れた二文字の名前を。


「なななな、なんですとぉーーー!!」


近所のスーパーで少し安くなりはじめた鶏肉を、
コソコソと買いこんでいた私は、
あまりの衝撃の事実に、
左手に半額になった鳥のもも肉を持ち、
右手にはアイフォンを握りしめながら思わず叫んでしまいました。

『いや、待て待て。落ち着きなさい私!兎にも角にも、まずはお肉を買って帰らないと!』

激しく動揺しながらも買い物を済ませた私は急いで家に帰り、
やることをチャッチャと終わらせて自由な時間を確保すると、
再び先ほどの大忘年会ポスターを開き、
マジマジと見つめました。

うん、やっぱり見間違いではありませんでした。
確かにそこには、
バッチリカッチリ間違いなくまぎれもない彼女の名前が書かれています。

「参加するんだー!大忘年会に憧れたあの方が来るんだー!」

もうすっかり舞い上がってしまって、
頭の中が有頂天ホテルになってしまう私です。

「あの人に会いたい、そのためにPSO2をはじめたんだから!少しでもチャンスがあるのなら、私はそれにすがりたい!」

拳を天高くつき上げ、
声高々に一人で勝手に宣言をする私です。

ついでに某歌手の歌を口ずさんじゃったりもします。

いきなり叫びだしたかと思うと、
「あいたーくてーふーるーえーるー!」と歌いだした私に、
家族がドン引きしていましたが、
そんなのまったく気になりません。

そう言えばいつぞやの日記で、

『あの人の足跡見つけたらから、必死に探さなくても同じship6だし、いつか会えるでしょー!アハハーン!』

とか、余裕と自信に満ちていた発言をしていた気がしたのですが、
そんな発言は前言撤回!とばかりに、
すっかり私は“ship2へ行って必死に探しまくる気満々”になってしまっていました。

掲げた拳をもとに戻すと、
素早くアイフォンを操作して、
鼻息あらくPSO2の公式ホームページを開きます。

そしてship移動の料金もまったく調べないまま、

「これだけあれば足りるでしょう!」

と、勢いよく1000ACを購入すると、
すぐにPSvitaを取り出して起動させようとして―――。



急に不安になりました。



『ちょっと待って、あれ?書かれていた名前の人って、本当に私の想像しているあの人のことなのかな?』

そうなのです。
私はそのポスターだけで勝手に「来るんだひゃー!」って舞い上がっていたのですが、
冷静に考えてみれば、広い広いPSO2の世界です。

『リアル同様に同姓同名の方だっているんじゃないのかしら?』

そう思ったのです。

つまりこのポスターに書かれている、
憧れの二文字の名前の方は、
実は私が憧れたブログを書いた人ではなくて、
全く別な方で“たまたま同じ二文字の名前の方だった”といった、
可能性があるのではないかと。

そんな風に私は考えたのでした。


途端にさっきまで興奮していた気持ちが、
ジェットコースターのように急激に下がっていきます。

家族も先ほどまで「フールーエールー!!」と騒ぎまくっていた私が、
急にピタリと動くのをやめたので余計に気味悪がっています。


『まずは、落ち着かないと!』


いつも先走って、焦って、失敗ばかりする自分にそう言い聞かせると、
私はその日にログインするのも、
shipを移動するものやめることにしました。



その代わりにアイフォンを握りしめ、

『ふら ブログ PSO2』

と、ヤフーの検索欄にキーワードを打ち込んで、

「憧れの方と同名でPSO2のブログをやっている子はいねがあああああ?!」

そう叫びながら、
血眼で必死に探しまわるのでした。




と、ココで。

またまた長くなってしまいそうなので、
続きは後半で書きたいと思います。


キャラクター表示の限界を見れるとは!