八本の手から絶え間なく繰り出される攻撃、
その威力はあまりにも強力で容赦なく私の体力を奪っていく。
『オペレーターが「もうすぐ倒せますよ!」とか言っていたけど、全然倒れないじゃない!』
終わりが見えない戦いに不安を感じながらも、
ごっそりと削られた体力をレスタで回復させた私は、
すぐに前方へと駆けだした。
先ほどたまたま気がついたのだが、
このエネミーが二本の腕で大事そうに隠していた“赤いコア”、
それが何故か今は丸見えになっている。
『あそこが、このエネミーの弱点ッポイ!』
そう感じた私はこのチャンスを逃すまいと、
必死に猛攻に耐えながら距離をつめていたのだ。
そしてフォトンアーツの射程距離内に入ったことを確信すると、
紅いコアに狙いを定め、
ジェットブーツにセットしてあったフォトンアーツ“グランウェイヴ”を発動させた。
フォトンアーツの発動によって発生したフォトンの波に乗り、
その勢いで一気に目標との距離を詰め、
弱点と思われるコアに高速の三段蹴りを繰り出し、
さらに「はい、オマケだよ!」と、
気合いの入ったダメ押しの回し蹴りをお見舞いする。
そして回し蹴りが当たった瞬間に、
私は“武器アクション”を使って後方へ飛び退きながら思わず叫んでしまった。
「よし、思った通り!」
見事予想は大当たり。
やっぱりココは弱点だったようで、
決死の覚悟で繰り出したフォトンアーツは、
今まで出していたダメージよりも遥かに大きいダメージを与えることに成功したのだ。
再び大きく距離をとりながらこの巨大なエネミー、
“ダークファルス・エルダー”を睨みつけた。
その姿は大分前にイベントクエストで戦った事のある、
“ファルス・ヒューナル”にどことなく似ている気もするのだが、
ヒューナルとは比べ物にならないぐらいに大きい。
そして、強い。
そう、この巨大なエネミー“ダークファルス・エルダー”はとてつもなく強い。
たぶん残り時間はあとわずか、
ダークファルス・エルダーの攻撃は弱まるどころか、
激しくなる一方。
『これは“ソロ”だったら、絶対に倒せてなかったなー』
そんな考えが私の頭の中をよぎる。
くるくるとゆっくり回りながら、
アークスシップの残骸へ降り立った私は不敵に笑うと
「そう、“私一人”だったら・・・ね」
と、呟き、
「“私たち”なら絶対に倒せる!」
叫んだ。
そうだ、私は一人じゃない。
再びフォトンアーツを発動すべく、
ジェットブーツにフォトンを送り込みながら、
私はこのクエストを受けたときに読んだ文章を思い出していた。
[ 恐れる必要は無い。
アークス各員の力を結集すれば、
必ず倒せるはずだ。
犠牲を恐れるな、
恐怖を覚えるな。
ただ、
【巨躯】を討つことだけを考えろ。
総員に告ぐ、これこそ“決戦”である。 ]
そう、“恐れる必要はない”。
だって、私には“頼もしい悪魔が憑いている”のだから。
「いっけー!」
自慢のジェットブーツがうなり、
大量のフォトンを炸裂させた。
――――――――――――――――――
時系列がややこしくなってしまい、
申し訳ない限りなのですが・・・。
砂漠での嘘っぱち事件から少し後、
クリスマスには少し前のこの日。
私は今日も観測素子を集めるべく、
ファーストキャラクターでログインしました。
いつものようにログインの儀式を滞りなく終わらせると、
ハード推奨ロビーへと移動し、
クエストカウンターへと向かいます。
受付のお姉さんが差し出したパーティーの一覧を見ながら、
『さてさて、今日は“誰でも楽しく”のパーティーはあるかなー?』
と、ドキドキしながらすべてのパーティーを見ていきます。
どれどれ・・・、おっと!
ありました、ありました。
嬉しいことに早々に見つけてしまいました。
パーティーの詳細を見ると、
レベル38の方がフレンドパートナーを一人だけ呼び出して、
凍土探索をしているようす。
なんともこれは!
申し分ないぐらいに、
なんとも私にピッタリなパーティーじゃありませんか!
まず“誰でも楽しく”のパーティーです。
さらに私が今探し求めている、
“惑星ナベリウスの観測素子”が拾えます。
そして、そして。
とどめに、
パーティーリーダーさんと私はそこまで“レベルに差”がありません。
と言うことは、レベル差を意識することもなく、
気兼ねなくパーティープレイを楽しむことができそうです。
おっと、こんなコトを書いてしまうと、
「え、お前今まで楽しそうに手伝ってもらってたり、初心者さんにお節介焼いていたジャン!」
と、各方面から苦情が殺到しそうな気がしてきちゃった私なのですが、
もちろんレベル差が大きくったって全然私は構いません。
自分よりレベルの高い方に手伝ってもらったり、
自分よりレベルの低い方をお手伝いしたりするのも、
私は大好きなのですが。
ですがあえて誤解を恐れずに言うのであれば。
どちらかと言えば。
コッソリと胸に秘めたる思い的なモノを申し上げるならと言えば。
同じぐらいのレベルの方と一緒に遊ぶ時が、
「足を引っ張らないようにしなくちゃーー!」
とか、
「よし、先輩らしくしなくちゃーー!」
とか、
そんなこと一切合財思わずに、
特に気負わず一番自然に、
遊べる気がしているからです。
とそんな訳で、
“自分にピッタリだと思うパーティー”を見つけた私は、
「どうやら今日は運がいいようだぞ」と、
一人PSvitaの画面をニヤニヤと見つめながらガッツポーズを決め、
パーティーに参加するを選択したのでした。
画面の端がキラリと光、
自分の名前の上にパーティーリーダーのZさんの名前が追加されます。
「はじめまして、パーティーに参加してもいいですか?」
「はじめまして、歓迎しますよ!^^」
「ありがとうございます!」
「クエストクリアしちゃいそうなので、ちょっと待っててもらえますか?」
「おお、ボスでしたか!はーい!」
いつも通りの無難な挨拶をして、
Zさんとしばしパーティーチャットでやり取りをしていた時でした。
突如、緊急クエストを告げる警報が、
アークシップのゲートエリアに響き渡ったのです。
『緊急警報発令。アークス船団周辺宙域に、ダークファルスの反応が接近しつつあります。』
途端にアークスシップ内の様子が一変し、
そこら中のモニターは全部、
そして天井までが赤一色に染まります。
緊急クエストには何度も参加してきた私でしたが、
この警報にはとっても驚いてしまいました。
だってアナウンスで“ダークファルスの反応が接近”って、
しっかりハッキリと言っているんですもの。
PSO2にも“ダークファルス”なるボスエネミーが存在していて、
日々アークスの皆さんがやっちめていることは知っていました。
でも私は運がいいのか悪いのか、
なんとPSO2をはじめてみてから、
一度もその姿を見たことがなかったのです。
突然のことにあたふたしてしまい、
意味もなくロビーをウロウロしていると、
Zさんがロビーへとやってきてくれました。
「ダークファルス来ちゃいましたねーw 行きますか?^^」
そう言いながら近づいて来てくれたZさんは、
真黒な肌を持ったデューマンの男性でした。
文字通り、本当に真黒だったのです。
今まで出会ったことのない強烈なキャラクターの登場に私は戸惑い、
ダークファルスのことを頭の隅っこに追いやって、
『この強烈なキャラクターについて、私は突っ込みを淹れるべきなのか?!』と、
真剣に悩みはじめてしまいました。
しかしZさんとは初対面です、
『常識的に考えて、いきなり容姿についての突っ込みなんてナンセンスだ!』と気がついた私は、
頭の隅っこに追いやられたダークファルスのことをすぐさま引っ張りだしてきて、
Zさんの質問に答えました。
「ですね、私はじめてなんですよ・・・」
「おおーw」
「足引っ張りまくりですよキット・・・」
「そこら辺は気にしないで、楽しくやりましょう^^」
「いいんですか?でも、緊張しますね・・・」
「緊張か、私も初めて行ったときは緊張したなーw」
「ありがとうございます、あと私はPSvitaなのでチャットとかも遅くて・・・」
「チャットとか、ゆっくりで全然かまわないので^^」
そんな感じの会話をしていく中で、
『どうやらこのZさんはとてつもなく優しい方っぽいゾ』と、
感じた私は何を血迷ったのか、
出会ったときから気になっていた、
“容姿”について聞いてみることにしたのです。
それも超ストレートに、
「って、Zさんは凄い肌色ですねw」と。
そして言ってから後悔しました、
『おい、ちょっと待って私?聞き方ってモンがあるだろうが!』と。
でもZさんは本当に優しい方だったので、
こんな失礼な私の言葉にも笑いながら、
「チームの皆にも散々弄られましたw」
と、イケメンスマイルで答えてくれたのです。
ありがとう、Zさん。
本当に天使のようなZさん、
しかしさらに調子に乗った私は、
全く逆の言葉を彼に送ってしまうのでした。
「悪魔みたいですねw」
ってね。
そして言ってから後悔したのでした、
『おい、ちょっと待って私?ほめ言葉言おうと思ったのなら、
“天使のような悪魔の笑顔ですね”とか、そんな感じに言っておきなさいよ!』ってね。
と、ココで。
長くなってしまったので、
続きは後半に書きたいと思います。